鍵と鍵穴 2021 8 29

書名 新型コロナの科学
著者 出村 政彬  日経サイエンス社

 新型コロナウイルスの本は、多数出版されていますが、
この本が一番わかりやすく、読みやすいと思いました。
 ウイルスが人間の細胞に侵入する方法として、
鍵と鍵穴の説明があります。
 ウイルス側には、鍵があり、
細胞側には、鍵穴があるということです。
 ここで、多くの人が思うのは、こういうことでしょう。
「なぜ、細胞には、ウイルス用の鍵穴があるのか」
 実は、この鍵穴は、ウイルス用にあるのではなく、
本来の用途があるのです。
 新型コロナウイルスでは、
鍵穴として「ACE2」が有名になりましたが、
そもそも、ACE2は、ウイルス用ではなく、
ACE2は、血圧の調整という仕事に関わっています。
 血液の中には、血圧を調整する物質が流れていて、
この物質を捕まえて分解して、血圧を調整するのです。
 そういう仕組みを新型コロナウイルスが利用するのです。
実に、巧妙というか、困ったものです。
 電車で言えば、車両と車両が連結器でつながっていますが、
ウイルスが乗った車両がくっついてしまうようなものです。
正確に言えば、「RNA」が乗っている車両です。
 ただし、これだけでは、ウイルスは細胞に侵入できません。
ウイルスがACE2にくっついた状態であると、
細胞がウイルスを飲み込んでしまうのです。
ここが電車と違うところです。
 実は、新型コロナウイルスは、もうひとつ侵入方法があります。
細胞の表面に「TMPRSS2」というタンパク質分解酵素があった場合は、
TMPRSS2を利用して、細胞の表面から侵入します。
電車で言うと、連結ホロでつながったようなものでしょうか。
 つまり、侵入経路は、二つあります。
実に、困ったものだと言えるでしょう。
 そのほかにも、新型コロナウイルスには、
特筆すべきことが多くありますので、この本を読んでください。
 新型コロナウイルスは、
風邪やインフルエンザ程度だと思っている人がいますが、
ウイルス学や分子生物学からすると、
実に、やっかいなウイルスと言えるかもしれません。


























































































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